江國香織の「とるにたらないものもの」を読んだ。
とるにたらないものもの (集英社文庫)
とるにたらない本、だと思った。


けして貶しているのではない。
僕はこの本がとても気に入った。
とるにたらない、と言いつつ、
身の回りのモノや事象に向けられたその視線は、
暖かく、さりげない。
普段の生活の中で、特別注目を浴びる訳じゃないけれど
気になってしまうモノ。ないと心寂しいモノ。
手にするとほっとする感じ。
そういう暖かな読後感が、この本にはある。
そういう意味での「とるにたらないほどのさりげなさ」は、
実はとても大切なものだと思うのだ。
眠る前に読んでも少しも疲れないのも良い。
いくつか自分も好きなものについて書かれてあって、
馬鹿馬鹿しい様だけれど親近感が湧いた。
その中の一つに二人静がある。
和三盆をまあるく固めただけの干菓子だが、
上品な甘さで、ポン、と口に放り込むと、ほっとする。


別なエッセイ集では、アゴタ・クリストフ
悪童日記」についても触れられている様だ。
これも大好きな本だ。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

「衝撃的だった。」と書いていた。
うん。
正にあれは、衝撃的だった。


すっかり気に入って他の著書も読んでみたくなったのだが、
たまたま入った書店で扱っているのは、どれも恋愛小説ばかりだった。
僕はどういう訳だか昔からこの手の本や映画が苦手だ。
暖かな気持ちにさせる微笑ましい恋愛話も、感動の涙を誘う悲恋話も、
つい「面倒臭い」と思ってしまう。
恋愛について、何処かでそういう感情を持っているからだろう。
どうしても、余所様の面倒にまで鼻先を突っ込みたいとは思えない。
僕はまだ自分の、それこそ「とるにたらない日常」だけで手一杯だ。