広大な地下道を掘り進む工事に従事している。


もう二度と
地上には戻れないような
半ば諦めたような気持ちで
地中深く掘り下げられた
地下トンネルの最下層
暗い暗い穴の底に
居る。


そこには地上の光はまったく届かず、
ちょっとしたトラブルで電源が落ちてしまうと
目を閉じているのか、
開いているのかの区別さえつかない程の
真の闇の世界が広がっている。


人夫達は過酷な労働を強いられており、
半ば使い捨てにされる様な酷い扱いを受けている。
ここでは人命が全く尊ばれない。


地震か何かがあり、
作業灯が消えてしまい、
それまで耳を劈くような音をたてていた工事用重機が
全て止まってしまうと
突然視界を奪われて、耳鳴りだけが後に残った。


巨大なコンプレッサーによって供給されていた酸素も
すぐに薄くなってしまうだろう。


目を見開いて自分の掌を見ようとするのだが
永遠に目が慣れる事もない様な暗闇の中で、
どうしても自分の存在を確かめられず
不安や焦燥感で押し潰されそうになっている。




どれほどの時間が経ったのか
いつのまにか耳鳴りは止み
今は上を向いているのか
下を向いているのか
もうそれさえもよく解らない。


僕は人だったろうか
それとも他の何かだったろうか
僕は生きていただろうか
僕は死んでいるのだろうか
僕は本当に存在しただろうか


何も解らなくなって
暗闇の中で目をぎらぎらさせながら
僕は僕を確かめようと
必死になって自分を探している。




そんな夢を
見た。