お洒落
電車の中で
向かいの席にとてもお洒落な初老の紳士が座っていた。
細くて小ぶりな金縁のラウンドフレーム。
派手過ぎない花柄のシャツ。
手触りの良さそうなテンセル素材のハーフコート。
足元にはバックスキンを使ったウィングチップ。
膝の上には大きめの革のバッグを乗せている。
どれも上品な茶系のコーディネイト。
グレーの髪は綺麗に後ろに撫で付けられ、
両耳には白いイヤホン。
音楽を聴いているのか、静かに目を閉じている。
その面差しが何処か女性的な感じがして
そういう年代の人には珍しい雰囲気を漂わせていたので
つい目が行ってしまう。
どんな生き方をして来た人なのかな。
若い頃はどんなだったのだろう。
つい色々と想像してしまう。
お歳を召してはいたけれど
如何にも「お洒落が身についている」
という感じがして素敵だった。
歳をとったら僕ももう少し身なりに気を配るようにしよう、
と、そう思った次第です。