さっき転寝したらおかしな夢を見た。


もうすぐ世界が終わる、という。
何処かへ急ぐ人、泣く人、喚く人。
僕は為す術も無く
薄暗い部屋で只管静かな曲を流し
猫を撫でながら心落ち着けようとしている。


暫くすると家の周りは意外なほどに静かになり
まだ日も高いというのに
まるでもう夜が来た様に暗い。


どこか諦めた様な、それでいて
まだ何か探し物が見つからないでいる様な、
少し寂しい気持ちで目が覚めた。


どうしてこんな夢を見たのかな、と思いながら
ベッドを抜け出して冷蔵庫へ向かう途中、
床に色々なものが散らばっているのを見て思い出した。


寝入り端に地震があったのだ。
このまま大きくなったら
もう目が醒める事はないんだな、と
そう思いながら眠ったのだった。


昔読んだ短編小説を思い出した。


惑星が衝突するんだったか
核戦争が起こるのだったか
兎に角避けられない理由で世界が終わる。
その最期の一日が描かれているのだが
実際に語られるのは
ある一組の夫婦の、何でも無い日常風景。
静かで、暖かで、少しだけ物悲しい。
とてもとても静かで
意外なほどあっけない最期。
もう一度読んでみたくなったが、
作者も題名も忘れてしまった。


時々
最期をどんな気持ちで迎えられるか、
という様な事を ぼんやりと考える。
もしその時を予め知る事が出来たら、
僕は心穏やかに迎えられるだろうか。
それとも見苦しく取り乱してしまうだろうか。
何がしたい、と思うだろう。
誰に会いたいのだろう。
何処に行きたいだろう。


それとも夢で見た様に
好きな曲をかけて
静かに猫の背中を撫でているだろうか。