猫にかまけて

猫にかまけて

町田康 「猫にかまけて」読了。
もっとずっと前に読み始めたのだが、
途中チィさんが病気をしたりして
何となく読み続けるのが辛くなって中断したままだった。


猫飼いには非常に辛い場面も書かれているので、
途中何度もチィさんを撫でたりして
気を紛らわしたりしながら読み進めた。


それでも読んでみて良かった。


本の中に

可哀想だから早く楽にしてやりたいといって
本当に楽になるのは誰なのか、と思う

という一文を見つけ、はっとする。


これまで何度も繰り返し考えている事だった。
「あ、この人も同じ事を考えている。
皆似た様な事を迷ったり考えたりしてるのかな」
などと思って勝手に安心したりする。
と言っても結論はやはり出せずにいるので
安心するというのは変だけれど。


自分が苦しんでいる側だったら、
「さっさとお終いにして楽にしてくれ」
と思うかもしれない。
しかしチィさんはどうだろうか。
そんなに臆病でも投げやりでもないかも知れない。


他者が苦しんでいる時、
殊にそれが言葉を持たない相手の場合、
勝手に判断したり決めつけたりする事は出来ない。


大事な相手が苦しむのを見るのが辛い。恐ろしい。
それでつい考えが揺れ動く。
楽にしてやる、と考えるのは
自分が楽になりたい為だと改めて気付かされた。


軽妙な文体の中に優しくて暖かいものがある、
ちょっと塩味の利いた本だった。
猫飼いの皆様にお勧めします。