チィ

出来る限りいつも通り過ごそうとしていても、 時々どうにも気が塞ぐので、 窮状をツイッター等で溢していたら、同じ経験をした方が、 「余っている猫用のサプリメントがあるので試してみますか」と 親切な申し出をして下さって、すぐに送ってくれた。 届いた…

小康状態、と言ってよいのかどうか、一時期の、 見ているのも辛い様なしんどそうな感じからは少し脱し、 機嫌だけはすこぶる良い。 鼓動も呼吸も早いままだし、腹部の膨らみも増していて、 腹水を疑っているが、医者は腹水ではないという。 背中や手脚はどん…

16日。 この辺りでは珍しいくらいの積雪。 さらさらと降り積もって、夜には何処も綺麗に真っ白になった。 雪深い処で暮らした事など一度もないのに、 雪が降ると沢山の事を思い出す。 自分ではあまりよく憶えていないのだけれど 小さな頃から雪が降るのを見…

8日。 レントゲン写真の肺に見える影が、 もしも急速に進行しつつある腫瘍だった場合、 容態が急変して窒息することもあると言われた。 軽度の炎症であることを願って抗生剤の注射をしてもらう。 病院から帰宅した時にはキャリーバッグから自力で出て来る事…

仕事が済み次第兄が病院へ連れて行ってくれる事になっていたが、 息苦しそうなのを見かねてタクシーで病院へ向かった。 レントゲンの結果、肺に影が見付かり、炎症を起こしているか、 ここ数ヶ月で急速に進行した腫瘍の可能性があると指摘された。 呼吸が苦…

水をあまり飲んでくれなくなってしまった。 喉が渇くだろうにとシュリンジから舐めさせようとしても 顔を背けて煩そうにする。 息が荒い。 薬も何とか飲ませてはいるが、 かえって苦しい思いをさせていないか心配になる。 少しでも楽に、チィさんらしくいさ…

毎日通院して目の周りに溜まった血膿を抜いてもらう。 処置に使う注射針が太くて痛そうだが、 チィさんは声を上げたりしない。 三日と四日は、正月休みだった妻が病院へ行ってくれた。 猫嫌いを公言して憚らない兄が、連日の様に車で送り迎えしてくれている…

クリスマスまで何とか漕ぎ着け、一緒に年を越す事が出来た。 本当によく頑張ってくれたと思う。 通院にも、毎週の注射にも、苦手な流動食や投薬にも、 あのチィさんが、さほど激しく抵抗もせず、 怖じたり非難がましい態度も見せず、少し煩そうにするくらい…

おなかのマッサージ、イージーファイバーやビオフェルミン細粒、 猫の便秘に効果があったとされるものを色々試してみたが、 どれも即効性のあるものでもなし、 今ひとつ効いているのかどうかよく判らない。 時々トイレの前でじっと蹲っているのを見ると、 矢…

尿毒症の軽減を期待して飲ませている活性炭(クレメジン) の副作用か、流動食ばかりで固形物を摂らない所為か、 そのどちらもなのか判別が難しいが、 チィさんが便秘になってしまった。 そもそもクレメジンは毒素を吸着させて便と一緒に排出させる為の薬なの…

週に一度、チィさんを病院へ連れて行く。 外気に触れさせる時間を出来る限り減らす為に通院には車を使うしかなく、 車を持たないので人に頼るかタクシーを呼ぶしかない。 今のところ週末に次兄が協力してくれて、何とか無事通院を続けている。 もうかなり医…

チィさんが朝から落ち着かない。 倍量になった薬の副作用が出て来て 不調でもあるのかと思い、はらはらする。 ホットカーペットを点けて暖かな場所を作っても、 部屋を移動する度に付いて来て、少し離れた場所に座り 何だかいつもと違う、物言いたげな表情で…

何をしていてもチィさんの事が頭から離れない。 唇に耳の先を当てて、少しでも普段より熱く感じると 熱が高いのではないか、呼吸が荒いのではないか、 今日は少し毛艶が良くないのではないかと あれもこれも気になって仕方がない。 一番気になるのは、あんな…

療法食に殆ど口を付けないし水を飲む量も少ない。 このまま様子を見ていていいのか不安になって病院へ問い合わせた。 退院して点滴を止めたので、また数値が上がっている可能性がある、との事。 義姉にお願いして病院まで乗せてもらい、 皮下輸液と猫用のポ…

様子はすっかりいつも通りのチィさんに戻ったのだけれど、 病院で言われた量の半分も食事を摂ってくれない。 病院では少し食べる様になっていたと聞いた療法食も、 トレーの前に座ってじっとこちらを見たまま、 「何か別なの出して」という顔をしている。 恐…

二三日だった入院の予定は、思いの外延びた。 数値はゆっくりと回復の兆しを見せ、 今日、漸く退院の許しが出た。 点滴の終わる時間を見計らって じりじりした気持ちで病院へ急いだ。 点滴の跡や目の周りの汚れを拭いてもらうと、 少しやつれはしたが意識は…

連れて帰れる訳でもないのに会いにゆけば、 かえって寂しがらせてしまうのではないか、と懸念しながら どうしても我慢する事が出来ずに、何度か病院へ脚を運んだ。 気付かれないように物陰に隠れて様子を覗き見ると、 見えているのかいないのか、 朦朧とした…

ドアが軋む音も、窓から吹き込む風の音も、 あの唄う様な、独り言の様な、微かな鳴き声に聞こえる。 玄関を開ける度、部屋を移動する度、 無意識にそこにチィさんの姿を探してしまう。 それが習慣になってしまっている。 居なくなって始めて、それを嫌という…

十月一日

二日程前から食欲不振。 水を飲む量も減っている。 具合が悪い時の様に暗がりでじっとしていたり、 普段と大きく様子が異なる訳ではない。 傍へ行けば喉を鳴らすし、いつも通り日向ぼっこもする。 それでも何だか気になって、妻と一緒に病院へ連れて行く事に…

鋳造と仕上げの依頼を済ませた帰りに、丸善へ寄った。 平積みされていた荒木経惟の写真集、「チロ愛死」を何となく手に取る。 表紙のチロの表情に惹かれたのかも知れない。 年老いて痩せた身体で横たわり、真っ黒な瞳で虚ろにこちらを見上げるチロに、 この…

飄々と独りで過ごすのが好きだったチィさんは この一年ですっかり様子が違って、 奥さんの座っているクッションにほんの少しでも空きがあれば そこへ無理矢理頭や尻をねじ込んで、 或いは「どうあっても」という様な仕草で奥さんの膝によじ登り 強引に居座っ…

朝になって、ちょっとした悪戯のつもりで mutonさんが眠っている部屋へチィさんを入れた。 チィさんは布団の上に乗って喉を鳴らし、 mutonさんが布団を捲ってやると中に入り、 そのままじっとしていたそうだ。 僕の布団には滅多に入らない。 不思議なもので…

今年も一緒に誕生日を迎えられた。 それがとても嬉しい。 窓辺で日向ぼっこをして まるで無防備な様子で寝込んだり、 起き出して時々思い出した様に不満げな声を上げ、 まだ仕舞わずにいる火燵にのそのそと入り、 暫くして出て来たかと思えば 不機嫌そうな寝…

採尿して夕方から獣医へ行く予定だったので待ち構えていたのだけれど、 なるべく新鮮なのを持って行って正確な検査結果を知りたかったので 朝のはスルーして午後に期待をしたら、 こんな日に限ってちっともトイレに行く様子がない。 チィさんが立つ度に容器…

いつも通り日向ぼっこをしながら気持ち良さそうに眠っているのを 無理矢理起こしてキャリーバッグに押し込み、病院へ連れて行くのが辛い。 ストレスを与えるとリンパ球数が減る、というのを目にしてから、余計に これが本当にチィさんの為になるのかどうか、…

今朝は久しぶりにチィさんと追いかけっこ。 投薬を済ませた後、家の中を走り回るチィさん。 時々立ち止まって振り返り、追いかけて来るのを待っている。 追えば跳ぶ様な俊敏さを見せる。 ドリフトしながら家の中を何周もした。 被毛は柔らかで艶があり、目は…

二度目の受診。 義姉が病院まで車に乗せてくれた。 お陰で外の冷気に当てずに済み、経済的な部分でも随分助かる。 心から感謝。 血液検査の詳細な結果が出ており、 血液中のリンパ球数が異常に少なくなっている事が判った。 これは二年ほど前に血液検査をし…

チィさんがトイレの方へ行く度にそっと後を着いて行って 様子を物陰から見守っている。 それに加えて今日は奥さんも仕事休みなので 二人でチィさんのトイレを物陰から覗いている。 チィさんがトイレの中から迷惑げな顔を向ける。 消炎剤が効いて膀胱の腫れが…

17日、夜。 火燵の中で少々の粗相。 身体が少し汚れてしまった様なので風呂に入れる。 さほど嫌がりもせず、静かに湯に浸かり、洗われている。 タオルでよく拭いてドライヤーをかけ、湯冷めせぬ様に火燵に入れる。 18日 普段と変わらぬ様子。 久しぶりに入浴…

セントレア空港には初めて行った。 遅い便で立つので、時間調整に空港内をぶらぶらと歩いた。 新千歳上空は吹雪いているとの事。 高速道路は閉鎖され、飛行機は1時間以上の遅れ。 離陸はしても天候によっては着陸出来ず 引き返す場合も考えられるとの説明を…