散髪屋

あまりに長く閉じ籠もって息を殺す様な暮らしぶりが続いたので、何をどう書き残していいやらよく解らなくなってしまって、何年も何も書かずにいた。 僕の持病の事もあって、取り敢えずは慎重にしていたけれども、こうも長く続くともう色々と通常に近づけて暮…

きょうはいい日

パニックになってはいけないけれど、冷静な危機感は持ち続けなくては、と思いつつ、何だか夢の中にいるような、熱に浮かされたような、薄ぼんやりとした不安感に包まれたまま、ニュースを見て溜息をつく。 武漢、イタリアやパリの惨状を聞いて、余所事のよう…

しづかに

もう先月の事。 所要あって妻が長男を連れて里帰りした。 僕はお留守番と相成った次男の御機嫌を伺いつつ過ごしていたのだけれど、夜になって激しい頭痛があり、いつもの薬が効かずに何度か吐いて寝込んでしまった。 何とか風呂に入れたり食事させたりして早…

こんな夢を見た

ひなびた観光地らしき場所。 ずっと昔、暫くの間この辺りで暮らしていた記憶がある。 これから駅を目指し、電車に揺られて、今は遠く離れた我が家へ帰らねばならない。 辺りはすっかり暗く、脚は疲れ切っている。 大きな神社の境内へと続く急な坂道へ向かう…

壊れる

壊れる。 兎に角色々な物が壊れる。 車が壊れる。 パソコンが壊れる。 エアコンが壊れる。 どれもそれなりに古いものだから、いつ壊れても何の不思議もないのだけれど、どうしてこうも続けざまに壊れるのか。 物に自然治癒力はないので、壊れることはあって…

みかじめ料

先日の夢。 宿屋なのか小料理屋なのか、大きな店の一階で蕎麦を啜っている。 建物はかなり古く、時代掛っている。 近くの席にあまり人相の良くない男達が三人居て、先程から頻りに小声で何か囁き合って、良からぬ相談をしているらしい。 男達の風体は時代劇…

奇妙な夢

ひとつめの夢 久しぶりに奇妙な夢を見た。 起きてすぐ家人に話したので、わりあいはっきりと憶えている。 最初の夢は、家族で旅に出る夢。 何処か田舎の方へ向かっている様だが、余程辺鄙な場所とみえ、夜行列車に乗って途中何度も乗り換えがあるのだけれど…

不具合

体調の事を記録しておいた方がいいだろうと思いながら、不調について改めて書くと自分でも気が塞ぐものだから、つい書かずに過ごす。 普段は人に話したりもしないし、自分でもなるべく気にせずにいる。 気にしたところでどうにかなる訳でもないのだから、気…

名前のない魔物

先々月入院した兄は、比較的軽度の脳梗塞だった。 思っていたよりも早くに退院し、仕事にも復帰した。 色々の不自由もある様だけれども、一先ず胸を撫で下ろす。 胸を撫で下ろしたところで今度は自分の体調が悪くなり、目眩が酷くて数日寝込んだ。 乗り物酔…

何もないことの幸せ

気が付けば、もう半月ほど誕生日が過ぎている。 この日記の書き出しに、「気が付けば」と書くのはもう何度目の事だろう。 もう誕生日なんて本人でさえ忘れている事も屡々で、特に目出度い日でもなくなっているのだけれど、何事もなくまたこの日を迎えられた…

悼む

Jóhann Jóhannsson - A Song for Europa (Live on KEXP) 先月、48歳の若さで亡くなった作曲家、ヨハン・ヨハンソン。 昨年公開された映画「メッセージ」で知って、ああ、いいな、この人の曲をもっと聴いてみたいな、と思っていたのに。 繊細で耳に残る哀し…

しましまろ

もうすぐ次男坊が三歳になる。 上の子とよく遊ぶおかげか、何でもよく兄の真似をして発語も早く、色々と話す。 微妙に間違うのが可笑しくて可愛くて、本当はいけないのだろうけど、敢えて正さないでそのままにしている。 「マシュマロ」は「しましまろ」。 …

泥棒

すぐに書き留めなかった為に部分的な記憶しかない。 何の都合だったか、断り切れずに見ず知らずの男を家に入れてしまった。 用事を済ませたら早々に帰ってもらわなければ、と考えている。 寝室に居る子供達と妻の様子を見に行くと、居間の方から洗面所の方へ…

灰色の部屋

半地下のようになっているマンションの一室。 洗面所には大きな鏡が張ってあり、その一部がマジックミラーのようになっていて、鏡の裏に小型のモニターが取り付けられており、来客があるとそこに映し出される。 古い装置で解像度は低く、映像はやや不鮮明で…

死者の助け

長年お世話になった恩師の死、甥の死、両親の死。 様々な形の死について、考えさせられる機会が多くなった。 これは自分が歳を重ねた結果として自然な事であるし、自分の死については割合感傷的にならずに冷静に考える事が出来るが、妻や子の事については、…

バンシー

三十日の十時を回った頃。 甥が自死したらしい、との知らせを受ける。 何故そのような事になったのか、詳しい事情が全く解らず、困惑する。 甥が成人してからは、日頃から親しく接していた訳ではないが、小さな頃には何度か子守を引き受けたりした事があった…

硝子と会話

二つの夢を見た。 一つ目の夢。 屋上に硝子張りの温室がある、古びた三階建ての家で暮らしている。 知り合ってまだ間もない女性が訊ねて来て、その温室の中で会話をしている。 互いの事をまだよくは知らないが、会話の内容は大変興味深く、とても楽しい。 女…

溜息

年末に子がインフル羅患などして、気がつけば年も明け、早くも月が変わろうとしている。 時が経つのが早過ぎて、気持ちがちっとも追いつかない。 忙しい、などと言ったら叱られそうな、ぐうたらした毎日である筈なのに、どういう訳だか慌ただしくはあって、…

父の骨

父の葬儀、何とか滞りなく。 母の時と同じ葬儀場、火葬場。 そして母の時と全く同じく、厳かな気持ちで臨んだのに、火葬場のトイレにて社会の窓が全開であった事に気付く。 母の時とあんまり同じシチュエーションなので、気付いた瞬間、驚きのあまり妙な声が…

父のこと

父が亡くなった。 四月にこの日記に父の事を書いてから五ヶ月。 病院のベッドで、安全の為に着けられたミトンを嫌がりながら、何度も危険な状態になりながら、呆れるほどの強靭さでその度に持ち直した。 もう回復の見込みが無いのなら、出来るだけ苦しまない…

慣れ

今週のお題「ちょっとコワい話」 久し振りに覗いたら、Blogのお題、というのが目に入って、それが「ちょっとコワい話」というので、暑気払いになるかどうか判らないけれど珍しく乗っかってみることにする。 まだ猫一匹と人一人で暮らしていた頃、ちょっとし…

記憶

日が長くなったので、時折保育園の帰りに公園へ寄り道をする。 ブランコを押していたら長男が唐突にこう言った。 「ねーねー、ちーくんが赤ちゃんだった時、ちーくんのこと、おばあちゃん抱っこしたよねー?」 「したよ。どうして?」 「おばあちゃんもう来…

突然の訪問

大学時代の友人から連絡があり、嬉しい突然の訪問。 出張の為に移動中なのだけど、新幹線を途中下車して寄ってくれるとのこと。 会うのはもう随分と久し振りで、長男が生まれて少ししてから一度、上京した折に会ったきりだから、もう四年近くも会っていなか…

黄金の日々

先月の初め頃だったか、或いはもう少し前か。 長男が園で貰って来た風邪にやられて、寝込んだ。 咳が酷かった以外は熱もそれ程には上がらず、 とは言うものの40度代迄は行かずにぎりぎり踏み留まる、という感じではあったのだけれど。 横になると酷く咳き込…

額の感触

いつもの事で、後で書き留めておこう、と思った切り、更新せずにそのまま過ごして忘れてしまう日々のあれこれ。 二人の子は無事に四歳と二歳になり、上の子はもうかなり色々と話をして意思の疎通が可能となり、殆ど親を困らせる事もなく、優しく物分りの良い…

書き残しておく理由

決して楽観的な方ではないが、自分では、大袈裟に悲観的な方でもない、と思っている。 誰にでも明日が来るわけではない、と考えているし、普段からそのように生きようと心がけてはいるが、気付くと色々と先送りしたり疎かにしている事ばかりで、この日記もそ…

非常扉

段々に冷えてきた所為か、またもや腰を痛めてしまった。 普段からあれこれ工夫もして気をつけている筈なのに。 前回の時程ではなく、時間を掛けさえすれば何とか自分で立ち上がれるから、まだマシだと思う事にする。 とは言え子供の送り迎えも満足に出来ない…

静かなる隣人

ちょっと耳にした話から、ずっと以前、学生時代に下宿していた頃の話を幾つか思い出したので、ここに書き記す。 もしかしたら前にも触れた事があったかも知れないが、よく思い出せない。 学生時代に暮らした部屋は、兎に角家賃が安いという事を優先して選ぶ…

伝える

姪がハロウィンメイクをしに来た次の日。 置いて行った荷物を取りに来がてら、晩御飯を一緒にする事に。 遠くに住んでいる訳ではないが、こうしてのんびりと一緒に過ごす機会はそう多くなく、生前母が彼女に伝えたくて伝えられなかった言葉や気持ちを、早く…

Happy Halloween

僕も妻も、パッと遊ぶ、とか、憂さを晴らす、とか、そういう事をあまりしない。 二人とも筋金入りのインドア派だし、呑んだり打ったりの派手派手しい(パッとした)趣味もないし、せいぜい家で映画を観るくらいが日々の楽しみで、それで大した不満もない。 し…